ハイレゾ、CD、地デジ、音が一番いいのはどれ? ~海苔波形との闘い「キミのとなりで」編~
TV放映版の別マスタリング音源を手がかりにしてハイレゾやCDの海苔波形と闘うこのシリーズ。今回は「安達としまむら」のエンディングテーマで、鬼頭明里の歌う「キミのとなりで」をとりあげます。
アップテンポで爽快感があり、非常にポップに仕上がっているこの曲ですが、歌詞の方は作中の展開を反映してやや切な目の内容になっており、エンディングとして効果的に使われています。
比較するのは以下の3音源になります。例によってサンプルを用意しましたので、聴き比べてみましょう。
1) ハイレゾ音源 (96kHz/24bit wav)
PCCG-01939
鬼頭明里 キミのとなりで 96kHz/24bit
mora
https://mora.jp/package/43000004/PCCG-01939_F/
e-onkyo
https://www.e-onkyo.com/music/album/pccg01939/
2) CD音源 (44.1kHz/16bit wav)
PCCG-01940
3) TV放送エアチェック (48kHz MPEG-2/AAC-LC 256kbps)
地デジ TBS
安達としまむら 第1話 (2020/10/9)
https://www.tbs.co.jp/anime/adashima/
まずは伝送帯域を確認してみます。1コーラス目のサビの頭、0分48秒付近のスペクトルを以下に掲載しました。帯域制限がわかりやすいように周波数軸はリニア表示にしています。

ハイレゾは96kHz/24bitでの販売となっており、40kHzあたりまでちゃんと信号成分が出ていることが確認できます。fs=48kHzで収録された音源を96kHzにアップサンプルしただけの「ニセレゾ」も多く流通している中で、本物のハイレゾはありがたいです。ただ、筆者の耳はもう15kHz以上は聞こえなくなっていますので、正直ニセレゾでも問題ないのかもしれません。はたしてこの20kHz超に出ている成分が本物の楽曲成分なのか、はたまた波形クリップで発生した高調波成分なのか、聞いて確かめるすべのない筆者には判断がつきません。

CD音源はマキシシングルのアニメ版 (PCCG-01940) です。高域はCD (44.1kHz/16bit) の限界いっぱいの21kHzまで出ています。

TVのオンエア音源はTBS地デジの本放送第1話の録画からとってきました。地デジの音声は AAC-LC 256kbps での圧縮となります。fs=48kHzですが、高域は18kHzまででスパッと切れています。地デジは放送局によって音声の伝送帯域上限が結構バラバラで、東京MXは20kHzまで出ていたりするのですが、TBSは18kHzどまりのようです。
次に、各音源の1コーラス目の波形(L-ch のみ)を以下に示します。TV音声はヘッドルームが大きく空いており、最大音量でもフルスケールの半分くらいまでしか使われていませんので、TV音源だけはピーク値がフルスケールとなるように正規化を行っています。

まずはハイレゾ音源ですが、残念ながら業界標準の (笑) 海苔波形です。ピークこそ -0.31 dBFS と寸止めしていますが、波形は完全に潰れています。平均音量は -9.78 dBFS です。
CDもハイレゾと波形は全く同じです。音圧加工後の販売用マスタリング音源から、ダウンサンプルしただけのように見えます。平均音量は -9.69 dBFS で、ハイレゾと大差ありません。実は先に入手していたのはCDの方で、より高音質のソースを期待して後からハイレゾを購入したのですが、がっかりな結果に終わりました。
一方、オンエアのTVサイズは音圧加工前の音源を使ってくれているようで、ピーク潰れのない自然な波形になっています。平均音量は -17.0 dBFS と、販売音源よりも実に 7dB も小さくなっています。0 dBFS に正規化したピークはイントロ 0分07秒のスネア一発目です。フルコーラス版とは明らかに別ミックスになっていて、ボーカル音圧に比べてイントロの音量がかなり大きいことがわかります。
それでは、実際に音の違いを聴き比べてみましょう。サビの頭、0分48秒あたりから9秒ほどを切り出しました。ハイレゾとCDは 96kHz/24bit、44.1kHz/16bit のwav データをそのまま、地デジは AAC-LC 256kbps を 48kHz/24bit wav に変換してあります。ファイルの拡張子は .mp3 になっていますが、中身は全て非圧縮の .wav です。なお、そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、例によってボーカルの音圧が同じになるようにハイレゾと CD は音量を補正してあります。
鬼頭明里 「キミのとなりで」 ハイレゾ (96kHz/24bit wav 音量補正 -7.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
鬼頭明里 「キミのとなりで」 CD (44.1kHz/16bit wav 音量補正 -7.0dB)
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鬼頭明里 「キミのとなりで」 地デジ (AAC-LC 256kbps → 48kHz/24bit wav)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
いかがでしょうか? ハイレゾもCDもボーカルの歪み感はほぼありません。アニソンでは音割れを甘受してでも音圧を上げるケースが多々ありますが、本作はそこまで酷くなく、良心的?と言えるマスタリングになっていると思います。(これを良心的と思ってしまうあたり、受け手のこちらがだいぶ洗脳されてきていますね)
ただ、やはり海苔波形の弊害は気になります。「一緒にいれ~ば~」の後ろ左側で鳴っているストリングスのビブラートのかかり具合に着目すると違いが分かりやすいでしょうか。テンポよく叩かれているスネアが、地デジはずっと中央から同じ大きさで聞こえますが、ハイレゾやCDは途中からどこかに行ってしまう感じです。地デジは海苔波形特有のボーカルが息をつく感じがなくて良いのですが、一方で圧縮による声のザラつきがやや気になります。手放しで地デジの方が良い、というわけにはいかないようです。
ハイレゾとCDの音の違いですが、ブラインドテストされるとたぶん筆者には区別がつきません。そういった意味では、ハイレゾのために支払った差額は (少なくとも筆者にとっては) 無意味な出費になってしまいました。せっかく24bitのビット深度があるのですから、差額に見合った音質のソースが、当たり前に提供される時代が来てほしいですね。
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アップテンポで爽快感があり、非常にポップに仕上がっているこの曲ですが、歌詞の方は作中の展開を反映してやや切な目の内容になっており、エンディングとして効果的に使われています。
比較するのは以下の3音源になります。例によってサンプルを用意しましたので、聴き比べてみましょう。
1) ハイレゾ音源 (96kHz/24bit wav)
PCCG-01939

mora
https://mora.jp/package/43000004/PCCG-01939_F/
e-onkyo
https://www.e-onkyo.com/music/album/pccg01939/
2) CD音源 (44.1kHz/16bit wav)
PCCG-01940
3) TV放送エアチェック (48kHz MPEG-2/AAC-LC 256kbps)
地デジ TBS

https://www.tbs.co.jp/anime/adashima/
まずは伝送帯域を確認してみます。1コーラス目のサビの頭、0分48秒付近のスペクトルを以下に掲載しました。帯域制限がわかりやすいように周波数軸はリニア表示にしています。

ハイレゾは96kHz/24bitでの販売となっており、40kHzあたりまでちゃんと信号成分が出ていることが確認できます。fs=48kHzで収録された音源を96kHzにアップサンプルしただけの「ニセレゾ」も多く流通している中で、本物のハイレゾはありがたいです。ただ、筆者の耳はもう15kHz以上は聞こえなくなっていますので、正直ニセレゾでも問題ないのかもしれません。はたしてこの20kHz超に出ている成分が本物の楽曲成分なのか、はたまた波形クリップで発生した高調波成分なのか、聞いて確かめるすべのない筆者には判断がつきません。

CD音源はマキシシングルのアニメ版 (PCCG-01940) です。高域はCD (44.1kHz/16bit) の限界いっぱいの21kHzまで出ています。

TVのオンエア音源はTBS地デジの本放送第1話の録画からとってきました。地デジの音声は AAC-LC 256kbps での圧縮となります。fs=48kHzですが、高域は18kHzまででスパッと切れています。地デジは放送局によって音声の伝送帯域上限が結構バラバラで、東京MXは20kHzまで出ていたりするのですが、TBSは18kHzどまりのようです。
次に、各音源の1コーラス目の波形(L-ch のみ)を以下に示します。TV音声はヘッドルームが大きく空いており、最大音量でもフルスケールの半分くらいまでしか使われていませんので、TV音源だけはピーク値がフルスケールとなるように正規化を行っています。

まずはハイレゾ音源ですが、残念ながら業界標準の (笑) 海苔波形です。ピークこそ -0.31 dBFS と寸止めしていますが、波形は完全に潰れています。平均音量は -9.78 dBFS です。
CDもハイレゾと波形は全く同じです。音圧加工後の販売用マスタリング音源から、ダウンサンプルしただけのように見えます。平均音量は -9.69 dBFS で、ハイレゾと大差ありません。実は先に入手していたのはCDの方で、より高音質のソースを期待して後からハイレゾを購入したのですが、がっかりな結果に終わりました。
一方、オンエアのTVサイズは音圧加工前の音源を使ってくれているようで、ピーク潰れのない自然な波形になっています。平均音量は -17.0 dBFS と、販売音源よりも実に 7dB も小さくなっています。0 dBFS に正規化したピークはイントロ 0分07秒のスネア一発目です。フルコーラス版とは明らかに別ミックスになっていて、ボーカル音圧に比べてイントロの音量がかなり大きいことがわかります。
それでは、実際に音の違いを聴き比べてみましょう。サビの頭、0分48秒あたりから9秒ほどを切り出しました。ハイレゾとCDは 96kHz/24bit、44.1kHz/16bit のwav データをそのまま、地デジは AAC-LC 256kbps を 48kHz/24bit wav に変換してあります。ファイルの拡張子は .mp3 になっていますが、中身は全て非圧縮の .wav です。なお、そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、例によってボーカルの音圧が同じになるようにハイレゾと CD は音量を補正してあります。
鬼頭明里 「キミのとなりで」 ハイレゾ (96kHz/24bit wav 音量補正 -7.0dB)
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鬼頭明里 「キミのとなりで」 CD (44.1kHz/16bit wav 音量補正 -7.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
鬼頭明里 「キミのとなりで」 地デジ (AAC-LC 256kbps → 48kHz/24bit wav)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
いかがでしょうか? ハイレゾもCDもボーカルの歪み感はほぼありません。アニソンでは音割れを甘受してでも音圧を上げるケースが多々ありますが、本作はそこまで酷くなく、良心的?と言えるマスタリングになっていると思います。(これを良心的と思ってしまうあたり、受け手のこちらがだいぶ洗脳されてきていますね)
ただ、やはり海苔波形の弊害は気になります。「一緒にいれ~ば~」の後ろ左側で鳴っているストリングスのビブラートのかかり具合に着目すると違いが分かりやすいでしょうか。テンポよく叩かれているスネアが、地デジはずっと中央から同じ大きさで聞こえますが、ハイレゾやCDは途中からどこかに行ってしまう感じです。地デジは海苔波形特有のボーカルが息をつく感じがなくて良いのですが、一方で圧縮による声のザラつきがやや気になります。手放しで地デジの方が良い、というわけにはいかないようです。
ハイレゾとCDの音の違いですが、ブラインドテストされるとたぶん筆者には区別がつきません。そういった意味では、ハイレゾのために支払った差額は (少なくとも筆者にとっては) 無意味な出費になってしまいました。せっかく24bitのビット深度があるのですから、差額に見合った音質のソースが、当たり前に提供される時代が来てほしいですね。
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